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マチルダの小さな宇宙

マチルダは十代前半。

一年前に姉のヘレーンが、電車に轢かれて死んだ。

それ以来、パパはあらゆることを見ないようにしているし、

ママは壊れてしまっている。

ヘレーンが誰かにホームから突き落とされたと信じるマチルダは、

犯人を探し出しそうと決心する。

全篇、マチルダの一人称で書かれていて、

使いたいけど普段は使えない訳語がてんこ盛り(←羨ましい)。

なんだか、『アンネの日記』みたいだと思ったら、

やっぱり文中に出てきた。

“幽霊は自分から現れるんじゃなくて、きっと生きている者が

こしらえてるんだ”

“問題は、人間は考えるのをやめたくてもやめられない段階まで

来ちゃってることだ”

どきっとするようなことを言う大人びたマチルダ。

そうかと思うと、これぐらいの年代って、なんだかわけわからない。

それは大人になる過程で、自分でもどうしていいか

わからないからなのだろう。

自分もこれくらいの年齢の時、そうだったかな。

現実の日常生活とは異なる、理屈ではない何か不思議な世界に

足を踏み入れた子供の頃を懐かしく思い出す。

訳者もあとがきに書いているように、

その子供の延長が、まぎれもなく今の自分なのであって、

決して別人ではないのだ。

マチルダも友だちもみんな、未来に突っ込まれてる。

どうなるかわからないその未来は、ひとりひとり違い、

自分ひとりで立ち向かっていかなくてはならない。

これが怖いのは、今でも同じかも。

ミステリではないけれど、かなりミステリな、印象に残る本だった。

ヴィクター・ロダート著、駒月雅子訳(早川書房)

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