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音もなく少女は

耳の聞こえない娘イヴ。

ヤクの売人である、暴力的な父親ロメインは

母親のクラリッサを殴り、イヴを運び屋に使う。

学のないクラリッサは、そんなロメインから逃げることすらできない。

母娘にとって、一筋の救いは、

ナチの迫害からアメリカに逃れてきたドイツ系女性フラン。

フランもまた、体だけでなく、心にも大きな傷を負っていた。

運命の共同体となった女たちの闘いの話。

最初から最後まで、嫌なことが起こりそうな不穏な空気が漂い、

読んでいて辛い。

時代は戦後間もない頃のことで、

聾唖者など身体障害者や、黒人への差別がまだあり、

ブロンクスという土地柄もあって、腐り切った雰囲気がふんぷんとしている。

そんな中でも、彼女たちに理解を示し包み込んでくれる

身近な人間たちがいて、

ろくでもないはずのロメインの孤独な苦悩も感じられるのが、

少し一息つける。

傷口から血を流し、慟哭にのたうつような全編の合間に、

何より、強く強く感じられるのは女たちの強さ、絆。

踏まれても、倒されても、這い上がる彼女たちの、

この強さは何なのだろう?

正義や同情ではない、体の奥底から立ちのぼってくる叫びに、

そのたび震撼とする。

“人生とは悲しみに耐えることよ。

勇気とはその悲しみを克服することよ”

ミステリではない。

人間の小説である。

ボストン・テラン、田口俊樹訳(文春文庫)

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蛇足:ひとつ大きな疑問

ロメインはどうなってしまったのでしょうか。

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