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卵をめぐる祖父の戦争

作家の私が、祖父から第二次大戦の話を

聞くところから始まる。

1942年のレニングラードは、ドイツの猛攻を受け、

篭城状態。祖父のレフは当時17歳。

撃墜された飛行機から落下傘で落ちてきたドイツ兵の

遺体からナイフを盗んだ罪で捕らえられる。

すぐに処刑されると思いきや、

拘置所で出会った脱走兵コーリャと共に、

なぜか秘密警察の大佐の娘の結婚式のために、

一週間以内に卵を1ダース調達してこいという

任務を課せられる。

かくして、レフとコーリャの卵探しの旅が始まる。

この話、全編に渡って、このふたりの下ネタスカトロ話で、

まるで漫才のようなのだけど、

その対極のように、雪のレニングラードの地獄絵描写がすごい。

いつ、頭を銃弾で撃ち抜かれるかわからない中、

スウィニートッドばりの人食い夫婦の餌食に

なりそうになって、命からがら逃げ出したり、

ドイツ兵の慰みものになっている女の子たちを助けようとしたり、

パルチザンと出会い、雪中行軍したり、捕虜になったりと、

これぞ、戦争というすごい場面が

これでもか、これでもかというくらい出てくる。

読者の方も、卵を探すという目的が、

だんだんわからなくなってくる。

そりゃ、そうだ。戦争中、ナチスがうろうろしていて、

みんなが飢えている中を、卵探しなんて、

現実だとはとても思えない。

不条理なのだ。戦争というものの不条理。

戦争なんて、これぐらいバカバカしく愚かなものだと、

言いたいのではないだろうか。

やたら文学的なくせに、卑猥でえげつないことをぶちかます

コーリャのキャラがいい。

お互い、なんだ、こいつと思いながら、

一週間で不思議な友情を育んでいくふたりの関係がいい。

ミステリではないけれど、特に後半はサスペンス要素も重厚で、

ものすごくお勧め。

デイヴィッド・ベニオフ、田口俊樹訳(早川書房)

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