« クイーン&Music Life展 | トップページ | 南極料理人 »

愛を読むひと

原作はベルンハルト・シュリンクの『朗読者』

小説はずいぶん前に読んだのだけど、

映画は邦題が気に入らなくて、なんだか手が出ず、

やっと観てみた。

1958年のドイツ。15歳のミヒャエル(映画ではマイケル)は

町中で具合が悪くなったところを、年上の女性ハンナに助けられる。

これを境にふたりは男女の関係になっていくが、

ハンナは必ず情事の前に、ミヒャエルに本の朗読をせがむようになる。

ところがある日突然、ハンナはミヒャエルの前から姿を消した。

その後、法科の学生になったミヒャエルは、

60年代に始まったアウシュビッツ裁判で、

ハンナが被告として裁かれる場面にショックを受ける。

ハンナは戦中、アウシュビッツの看守で、

何百人ものユダヤ人を見殺しにした罪に問われていたのだ。

同時に裁かれていた女性看守は他にも何人かいたが、

報告書を書いたとしてハンナが主犯にしたてあげられてしまう。

その決定的な証拠を覆す、

彼女の“秘密”をミヒャエルは個人的に知っていた。

しかし、明らかにすれば罪が少し軽くなるはずの

その“秘密”を、ハンナはひた隠し、あえて終身刑を受ける。

ミヒャエルは長い年月の間、面会には行かずに、

昔、朗読してきかせた本をテープに吹き込み、

ハンナに送り続けるが・・・・・

あまりに重い重いテーマで、胸が締めつけられる。

母親ほどの年令の女性と少年の性愛という

スキャンダラスな内容だけでなく、

ホロコーストに対するドイツ人が背負った罪の意識。

一般市民が残虐な行為をせざるをえなかった状況に

追い込まれた戦争というもの。

ハンナが裁判官に向かって

“あなたなら、そのときどうしましたか?”と問うシーンは、

そのまま私たちにも問いかけられている。

状況が違えば、誰でもハンナと同じ立場になる。

それが戦争というものだと、痛感する。

ミヒャエルはいつもずっと迷っている。

少年の頃、年上の女と関係を持ちながらも、

若い女の子に色めき、

裁判の時、“秘密”を明かすよう、ハンナを説得しに行こうとするが、

途中で踵を返してしまう。

“私は命令されただけ”と声高に言えない当時のドイツ人の苦しい胸の内と、

戦犯なのだから刑を受けて当たり前というドイツ人の諦めの意識。

確かにハンナのやったことは、許されない行為だが、

彼女だけを裁けばそれで終わりということではないはず。

くしくも今日、911の首謀者とされているウサマ・ビンラーディンが

アメリカの精鋭部隊に殺害された。

狂喜乱舞するアメリカ人の姿に、少々違和感を覚えた。

テロ行為はどんなことがあっても許されることではないが、

果たして、一方が絶対悪で、一方は絶対善だと、言い切れるのか。

この映画を観て、同じことを感じた。

いいとか悪いとかの結論は下せない。

さまざまな意見が分かれる内容だろう。

ハンナを演ったケイト・ウィンスレットは

アカデミー主演女優賞をとっている。

ぜひ、本も読んで欲しい。

51c20d5sz7l__sl500_aa300_

ベルンハルト・シュリンク、松永美穂訳(新潮社)

|

« クイーン&Music Life展 | トップページ | 南極料理人 »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/197391/51562609

この記事へのトラックバック一覧です: 愛を読むひと:

« クイーン&Music Life展 | トップページ | 南極料理人 »