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悪霊の島

語り手であるエドガー・フリーマントルは、

成功した建築会社の創業者。

そんな順風満帆な人生が、

大事故で右腕を失ったことから、一変する。

妻とも別れ、事故の後遺症に苦しんだあげく、

医者に勧められて、フロリダのデュマ・キーという風光明媚な島に

家を借り、かつて趣味だった絵を描き始める。

ところが、その絵が予言的な要素を含むものになり、

さらに、失くした右腕が幻肢として

たまらない痒みを訴えるたびに、

不思議な絵を次から次へと描きなぐるようになる。

そんな折、エドガーは島の豪邸に住む資産家の老女エリザベスと、

その介護をするワイアマンという男と知り合う。

その老女の双子の妹は、まだ子供の頃に溺死していて、

いまだに見つからないという過去があった。

そして、特殊な能力にとりつかれたエドガーに、

魔の手が襲い掛かる。

上下2冊の分厚い本で、

前半は丁寧すぎるほどの描写で、

わりとゆっくり話が進んでいく。

そんな長さの中にも、

え?という不可解な出来事が静かに起こり、

なんかある・・・・と徐々に読者の恐怖を煽っていく筆致がすごい。

後半は、エドガーに縁のある人たちが次々に死んでいき、

邪悪な存在との対決が展開されるのだけど、

血が飛び散る凄惨な場面がなくても、

読む者の想像力をかきたてる文章がひたすら怖い。

キング自身が、絶対に実体験してるのではと思わせる、

生理的に鳥肌がたつ、おぞましい表現。

かつてエリザベスが子供の頃、家族と住んでいた

島の南端にある廃屋の中での描写は圧巻。

墓をあばいた時のような黴くささ、蔓が絡まり、虫が蠢き、

朽ちてボロボロの状態が、手に取るようだ。

ネタバレになるので詳しくは書かないが、

ある場所で、白骨遺体が見つかり、

あえてそこに足を踏み入れなければならない状況には、

昔、翻訳を手伝ったルース・レンデルの『心地よい眺め』の

ワンシーンを思い出した。

じわじわ怖いホラーなのだけど、家族の物語でもある。

さすが、スティーブン・キング。すごいです。

スティーヴン・キング、白石朗訳(文藝春秋)

9784163285009

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