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最初の刑事

いやあ、これはおもしろかった。

事実は小説より奇なりとはまさにこのこと。

探偵なるものが現れたのは、

エドガー・アラン・ポーが生み出したデュパンの方が先だ。

現実世界での最初の探偵と言われている

スコットランドヤードのウィッチャー警部が挑んだ、

ロード・ヒル・ハウス殺人事件という

実際の事件に焦点を当てたノンフィクション。

時は1860年、ヴィクトリア時代のイギリス。

もう、これだけでわくわくものだが、

ある中流階級一家の屋敷内で、

当主の幼い息子の惨殺死体が見つかった。

屋敷は密室状態だったため、

内部の者が疑われたが、

当時、立派な中流階級の家庭内を、

警察といえどもかぎまわることはなかなかできず、

彼らが犯罪を犯すなどということは、考えられないという

偽善的モラルがまかり通っていた。

地元警察ではなかなか埒があかず、

そこで、ウィッチャーの登場となる。

当主は二度結婚しており、

前妻の子供と、後妻の子供たちが

同じ屋根の下に同居していた。

こうした家庭内の複雑な人間関係から、

当主が不倫していたのではとか

前妻と後妻の子供同士の妬み感情、

使用人の関わりなど、スキャンダラスな噂が出るわ出るわ。

くしくも当時はディケンズ、ウィルキー・コリンズ、コナン・ドイルなど、

ミステリ書きとして著名な作家たちが、同時並行で生きていた時代。

彼らがこの不可解な事件に影響されて書いたと思われる作品が

その後、次々と生み出された。

あげくの果ては、マスコミや一般庶民まで探偵熱に浮かされる

一大ブームとなっていった。

ウィッチャーは犯人の目星をつけていたのに、

結局は世論の波の大きさに負けて、

事件解決をみないまま、退くことになる。

何年もたってから、犯人の自白によって

いちおう事件は決着したかに思われたが、

果たして本当にそれが真実だったのか、という疑問は

現代でも残る。

この後、19世紀後半にかけて、

イギリスでは切り裂きジャックなどの凶悪事件が続いていく。

ロード・ヒル・ハウス事件は、100年以上前の事件だが、

犯罪の被害者も犯罪者も、いい見世物になってしまうのは

いつの時代も変わらないのだと感じた。

人が殺されたというのに、

それを娯楽にしてしまう私たち人間って、何なのだろう。

と、ミステリ好きの自分もシ・・・・ンと考える。

ヴィクトリア時代の暗く重苦しい大きな屋敷(見取り図つき)での殺人、

家族の複雑な人間模様や、無責任な世論の流れなど、

すべてがずっしりおもしろい。必読!

ケイト・サマースケイル、日暮雅通訳(早川書房)

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