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サラの鍵

1942年、ナチス占領下のパリ。

フランス警察による、ユダヤ人の一斉検挙が始まる。

事情を飲み込めない10歳の少女サラは、

弟ミシェルを納戸に隠して鍵をかけ、

すぐに迎えにくるからと、約束する。

しかし、両親と共に連れて行かれた先はまさにこの世の地獄。

両親とも引き離され、サラは弟との約束を守りたい一心で脱走。

そして、数奇な運命をたどることになる。

2002年のパリ。

くしくもこの事件から60年後、

ジャーナリストのジュリアは、この“ヴェルディヴ”事件を

記事にすべく、調べを進めるうちに、

自分のフランス人の夫の家族と、

このサラという少女との接点を見つける。

真相をさぐるべく、過去を追いかけていくが・・・・・

すごくページターナーな話で、一気読みしてしまった。

まずは、、当時のサラの視点と、現代のジュリアの視点で、

交互に話が進み、後半は当時のフランス人、

つまり、ジュリアの嫁ぎ先一家の秘密へとつながっていく。

戦争とは、こういうものなのだと

改めて思い知らされる話だった。

当時、引き立てられていくユダヤ人たちを、

黙って見ていた一般のフランス市民たち。

“その人たちは善良な市民なのに”と抗議する人もいたが、

当時の情勢から、そんな勇気のあった人がどれだけいたか。

もちろん、諸悪の根源はナチスなのだけど、

戦争というものは、家族もあり、愛情豊かなごく普通の人間を

悪魔に変えてしまう。

肯定はできなくとも、誰がそれを責められるだろうか。

自分が同じようなことをしないと、誰が言えるだろうか。

戦争とは、加害者も被害者もない。

どっちもどっちになりえる戦争など、

決してしてはいけない、とつくづく思う。

この事実について、つい最近までフランス人は知らされていなかった。

もちろん、私たち外国人も知らない。

でも、アンネの日記の例もあるとおり、

こんな悲劇はパリだけでなく、あちこちであったのだろう。

封印してしまいたいほどの恥辱でも、

忘れてはいけないことがある。

人間は忘れる動物。忘れると、また同じ過ちを繰り返す。

ジュリアが、フランス人と結婚したアメリカ人女性という設定なのだけど、

どうして、フランス人にしなかったのだろう。

作者はフランスとイギリスの血を引く人だが、

主人公を生粋のフランス人にすると、

あまりにも、自己弁護すぎると思ったのだろうか。

素敵なクリスティン・スコット・トーマス主演で

(う~ん、この人はどう見てもアメリカ人に見えない)、

映画にもなっている。

タチアナ・ド・ロネ、高見浩訳(新潮社)

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